今と昔の急斜面小回りの違いを写真や動画で比較。ウェーデルンとカービングパラレルターンはどう違う? PR

今回のスキー上達方法は今と昔の滑り方の違いを解説しつつ、初心者から中級者が上級者にレベルアップするためにはどっちが上達の近道なのかを深掘りして説明します。
まず、今と昔のショートターンはこういった違いがあります。
- ウェーデルン:スキー板を横向きにして、ショートターンする。ターン幅が圧倒的にまっすぐ(ショートターン用で190cmの時代でしたので、そもそも角付けしただけはなかなか曲がらないので、昔はがっつり外足荷重で上下運動が最重要でした。
- 小回り:カービングを使うのでターン幅が明かにウェーデルンより広い。全日本スキー連盟(SAJ)では小回り、日本プロスキー教師協会(SIA)ではショートターンと正式名称で使ってますが、SIAの動画を見ても「小回り」と表現で使ってるので、言葉の意味にさほど差はないかと思います。ウェデルンとの違いはカービング要素が入る点です。カービングは昔とは違い、角付けしただけで板がたわむので、そこまで上下運動しなくとも綺麗なパラレルターンになりやすいというメリットがあります。(デメリットも下記に記載)

おそらく多くの人はアルペンスキー競技やスキー技術選のトップ選手のようなフルカービングターンを想像してるかと思いますが、これが今風というわけではないです。
多分、初心者や中級者が基礎という土台をスルーして真似すると、下記の消費者庁が出すデータのようなケガをするでしょう。
そうではない、ゲレンデでの安全を考慮した小回りがあるので、ぜひこのページで学んでいただければと思います。
スキーはウェーデルンのズラし方から覚えると暴走を防げる。一方、カービングターンから覚えると暴走しやすい
上記の動画前半に「ズラし方」について解説してます。
スキーをズラすとは
板を横向きにする動きをターンで入れる
ということです。
昔のウェーデルンというショートターン(小回り)の滑り方がまさにこれでした。
これをやれば常にブレーキの強弱をつけながら滑ることができるので、暴走を防ぐことができ、スピードをコントロールすることが可能となります。
今風のカービングターンから覚えようとすると、スピードがいきなり上がり初心者にはおすすめできない

わかりやすくイラストにするとこんな感じです。
左が昔のウェーデルンの基本形(フォームが変わっても今も健在)、右がカービングターン(今風)ですが、左は右に比べスキー板が横向きになってるのがわかるかと思います。
スキーはブレーキをする際、こんな滑り方で止まりますよね?↓

スキー板が進行方向に対して逆らうことで、停止することができます。(これを「抵抗」とスキー業界では言います)
スキー上級者ほど
同じブレーキをしてるんだけど、ブレーキしてる時間が短いのが上級者(というか初心者からしたらブレーキに見えない)
なのです。
実はザックリ言うと上級者と初心者のレベルの違いってこれだけなんです。
ただし、カービングターンは少し性質が変わります。
フルカービングターンの基本はスキー板を横向きにしない(ズラさない)結果、スピードが増す。アルペンスキー選手は昭和・平成初期の時代からフルカービングをやってる。

この写真は以前スキー検定向けに紹介した1枚の画像ですが、雪煙の量が明らかに違うのがわかるかと思います。
上記の比較写真を見た上で、もう1度下記のイラストを見ていただきたいのですが、カービングターンは昔のウェーデルンと違って
「1本または2本のラインが出る」
という大きな違いがあります。


何が言いたいかと言うと、
ラインが出る=ブレーキしていない
というわけです。
アルペンスキー選手なんかはまさにこの滑りで、実際に大会や練習で前の人の滑った2本の線がクッキリと見えます。

実はカービングという技術はカービングスキー板が登場してから生まれた技術ではなく、昔からある技術です。
実際に私のスキー部が90年代にやってたフルカービングターンの基本練習を下記のYouTubeで公開してますが、これに
上半身と下半身の傾きを入れると今風になるというだけ
がカービングターンというわけです。(ザックリ言うと)
再生後5分10秒から90年代の練習再現映像が出ますが、ここから傾きを入れて深回りをしたり、内側にもう少し荷重したりするわけです。
カービングターンにはリスクがあることを知っておく(特に学校の先生へ)

手前にある青い本「SAJ資格検定受検者のために2022年度」には全日本スキー連盟公認(SAJ)1級検定に
- 1級から横滑りが消えた理由
- 今後も「横滑り」がベースにある
- 暴走するスキーヤーが増えた過去
がP71に書かれています。
カービングスキー板が登場した当初、内側のスキー板に荷重したり、両足荷重など様々なスキーテクニックがスタンダードになり、
トップスキーヤーの真似するぜ!
と雑誌などを鵜呑みにするスキーヤーが増えたのかわかりませんが、とにかくカービングで暴走する人が全国的に増え、事故件数も増えたという歴史があります。
後に全日本スキー連盟(SAJ)は1級検定種目に横滑りを設定し、市場が落ち着いたのを待って横滑りが消え、総合滑降に変わったわけですが、この横滑りが結果的に暴走を食い止めるわけです。
元々はアルペン競技の技術、カービングターンは選手レベルになってからでも遅くない。

2024年10月7日に発売された日本スキー教程はカービング色が強くなった印象を個人的には持ってますが、それでもスキッティングターン(横滑り)は残してます。
こういった歴史を踏まえて考えると、個人的には
- ポジションが悪い
- そもそもパラレルターンもできない
- ショートターン(小回り)もできない
- ストックが使えない
- ブレーキを自由自在にできない
- 落ち着いて物事を判断できない
こういったレベルの人(年齢も考慮)には、スピードが上がるカービングターンは教えるべきではないでしょう。
元々はタイムロスをしないためにアルペン競技で使われていたスキーテクニックであり、スピードを出すためのものです。
それを誰でも簡単に板を傾けるだけで綺麗な1本の弧(シュプール)を描けるので、ここまで普及したわけですが、当然代償もあるわけです。
なんでもそうですが、基礎(土台)は重要なのです。
今風の「小回り」はカービングターンとスキッティングターンの良いとこどり

上記ではアルペンスキー競技のような、いわゆる「フルカービングターン」はおすすめできないということです。(フルカービングターンで強弱を自由につけれるレベルのスキーヤーはしても問題ないでしょう)
理由は以下の通りです。
https://x.com/hide_skiarea/status/1867063340734062974令和5年の消費者庁のスキーのケガの統計データを見ると、ぶっちぎりで膝の怪我が圧倒的ですね。靭帯損傷がすごい・・・
①下肢の怪我(約50~75%)
②上肢の怪我(肩や腕、約20~30%)
③頭部の怪我(約5~10%)
④脊椎損傷(約5~6%)
⑤手首や指の怪我(約5~10%)
特に2024年のスキー技術選の上位を見ると内傾角出しまくり選手に点数が付く状況で、見栄え的に確かにカッコイイわけです。
ですが、1番安定してるのがそこまで内傾角を出さない、オーソドックスな滑りをする武田竜選手が5連覇中。
私はそこが安心材料になってると思ってるわけで、ジャッジも結局、
「ミスがない滑り」
に点数を出してるわけです。
これが何を意味するかを考えて欲しいのです。
「ミスがない=どんな斜面・雪質でも安定した滑り」
ということなのです。
体重を内側に重心を寄せていくカービングターンは今後どうなるのかな?と個人的には思ってます。
フルカービングターンではなく、カービングとスキッティングターンのハイブリッドな小回りがおすすめな理由

ここからは「安全重視でカービングターン、パラレルターンしたい人向け」に説明しますが、ウェーデルン時代の「スキッティングターン」(テールをズラす滑り)と今風のカービングターンの両方を混ぜた滑りをすると急斜面や中斜面での暴走を防げます。
個人的にスキーを純粋に楽しみたい人はこのような滑り方をおすすめします。
これで1級も合格しましたし。
今風の滑りと昔の滑りを混ぜた滑り方

わかりやすく言うと、
- 2級の昔風のスキッティングターンを入れつつ
- 1級の「スキッティング」と「カービング」を混ぜた滑り
にする。
2番をするというイメージになります。これだけだと何言ってるかわからない人も多いかと思うので、簡単に言ってしまうと
今風と昔の滑りを混ぜると安全性が増す
- ターンする際に角付けでカービングを使う
- センターポジションから外足荷重
- 結果、テールがズレてスキッティングターンもできる
という流れになります。
わかりますかね?^^;
実際に動画で比較してみるとよくわかるかと思いますので紹介しておきます。
再生後4分30秒でその滑りが出てきます。
左がウェーデルン風、右がスキッティングターンとカービング要素を足したターンです。
つまり、ウェーデルンの「横滑り」をテールで残すという感じの滑りです。
次に連続写真で見てみましょう。
昔のウェーデルンの滑り方の連続写真解説。スキー板をいきなり真横にしてた時代


映像で見るとこんな感じです。
再生後3分10秒から出る左側の滑りです。
写真で止めて見ると一目瞭然ですが、雪煙の量が圧倒的に違います。
正確なウェデルンはもっとスキー板のスタンスが狭くするのが正解です。
私はアルペンスキー競技をやっていたせいか、少しスタンス広めです。
一方、今風のショートターン(小回り)となるとこんな感じになります。
今風の小回り(カービングショートターン)

この写真は急斜面でのショートターンですが、上記のウェーデルンと一緒で雪煙が出ています。
急斜面なのでフルカービングターンでもラインが落とされると雪煙が舞うので、パッと見はわかりにくいですが、一応ズラしてます。
今度はこのショートターンを連続写真で見てみましょう。

ここは理想とするショートターンが皆さんあるかと思いますのでストックはお任せです。

この写真で言うと、右足が次の外足になるので、外側の足に体重移動していきます。ちなみにシェーレンを防ぐ1つの方法としてシュテムターンを徹底的にやるというのも1つの方法です。アルペンW杯選手もやってる人が多く、上記の写真のように一瞬八の字になってるのがわかるかと思います。この形(流れ)が有効です。

外足荷重がしっかりできると、雪面からの反動で反対側への体重移動がスピーディーになるので、そのまま反動を利用して板をスイングさせます。ここで一瞬ウェーデルン時代の「横滑り」を使います。

外足のスキー板をよーく見るとわかるかと思いますが、すこーししなってるのがわかるかと思います。これが次の写真でかなり曲がってるのがわかります。また、スキー板の先端をしっかり角付けし、カービングも使います。そしてテールの後ろからバンクができ始めてます。
急斜面でのスピードコントロールされた暴走しないショートターン(小回り)は小分けに練習して習得する。

色々やることが出てきましたが、スキーの基本は最短最速スキー上達方法でも書いてる通り、重要要素を抑えつつ、小分けにして練習することが大切です。
YouTubeのスキーテクニックチャンネルでは上記の作業のほとんどを無料で解説してます。
これらを1つ1つ確実にマスターすることが重要です。
全部を一気にするとおかしな動きになる人がほとんどだと思うので、1つ1つの動きをよく理解し、なぜ必要かを動画から学んでください。
それらが全部連動して、1ターンが完成します。
今回は今と昔の小回り(ショートターン)の違いについて解説しましたが、基本的なことは上記の6つであり、昔から変わってない部分がスキーの基礎となります。
これらを全部押さえてからフルカービングターンなどやると、より精度の高いスキーが可能になるはずです。
ぜひ実践してみてください。
追伸:私のターンは見栄えを無視してるので、技術選向きではないです。1級もオール70点(緊張あり^^;)なので、技術的には合格レベルという解釈で理解してください。検定に技術選のようなビジュアル担当ジャッジが存在するかわかりませんが、ビジュアルよりもタイム重視のアルペン寄りの滑り方です。(複数の検定員に何も過去を言ってないのに「完全アルペンの滑りですね」と言われ、バレました・・・^^;)

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この記事を書いた人 Wrote this article

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基礎・競技に関係なく使えるスキー上達法についてYouTubeとブログで解説しています。用具に関する話題なども豊富にブログで書いてます。