パラレルターンの種類は10以上。スキー技術を解説
今回のパラレルターンの滑り方はパラレルターンの種類を解説します。結論、基本を押さえておくと全部滑れます。
- パラレルターンは大きく分けて小回り(ショート)、中回り(ミドル)、大回り(ロング)、不整地(コブなどの非圧雪地帯用の滑り方がそれぞれにある)に分類される。
- また、パラレルターンは「テールをズラすパラレルターン」と「テールをズラさないパラレルターン(カービングターン)」に分かれる。
- 基礎、アルペン競技(ここだけで4つある)、モーグル、マウンテンスキーなど多義に枝分かれしていき、それぞれ使う技術が異なる。
- スキー検定では「ベーシックパラレルターン」と「パラレルターン」に分かれる。これは2番のことであり、全日本スキー連盟(SAJ)では名称が一般と異なっている。(カービングターンはパラレルターンの一種なので名称として「カービング」という言葉を使わないようにしているかもしれない)
上記の要約を見てもわかるかと思いますが、パラレルターンは非常に多義に渡ります。
例えば、同じ不整地でも
- 検定試験でのコブでのパラレルターン(1級、テクニカル、クラウンでも求められる技術が違う)
- モーグル競技でのパラレルターン
- 深雪でのパラレルターン
- マウンテンスキー(山スキー)でのパラレルターン
など色々滑り方が違ってきます。
1つ1つ解説していくので、目次から知りたいところを読んでください。
一般的なゲレンデで使うパラレルターンとは?
全日本スキー連盟(SAJ)の定義、各競技団体での定義を抜きで説明するとパラレルターンとは一般的に
足を揃えて滑ること
を意味しますし、この解釈でOKです。^^;
こちらの動画は一般の人向け(検定とか競技をしない人向け)にパラレルターンについて解説したものです。
これを見れば大まかな部分は理解できます。
また、パラレルターンは大きく分けて
- 小回り(ショートターン。ターン弧5mほど)
- 中回り(ミドルターン。ターン弧7mから9m)
- 大回り(ロングターン。ターン弧14mから15m)
- 不整地(コブやゲレンデ外の非圧雪地帯)
の4種類に分類されます。
細かい技術の違いは記事後半で解説しますが、ここでは
4つの種類に分類されるのねー
くらいで結構です。
ちなみに上記のターン弧の長さは全日本スキー技術選手権大会での規定になります。
「大体このくらい」
という目安で覚えておくと良いです。
パラレルターン小回りとは?
パラレルターン小回りとは読んで字のごとく
細かく連続してターンすること
を意味します。
詳しくは下記の記事で解説してるのでこちらをご覧ください。
ウェーデルンと小回りはどこが違うのか?
違いを簡単に説明すると
- ウェーデルン:板が長かったのでテールを横向きにする滑り方だった
- 小回り:板が短くなり、トップとテールの幅が広くなり、「小回り」が効くようになった。つまりテールをズラしてショートターンする必要が無くなり、エッジからエッジでのターン、つまりカービングターンがショートターンでも可能になった。(ロングターンは90年代の板でも可能だった)
という違いがあります。
1991年にカービングスキー板がクナイスルから登場し、1996年にはオガサカからKEO`Sというカービングスキー板の独自ラインナップが登場。私も1996ー1997シーズンにケスレーを買い、いち早くカービングの練習をしました。
当時、90年代半ばでも板が長く、まだウェーデルンというパラレルターン技術が一般的で、コーチでもカービングターンという言葉すら知ってる人が少ない時代でした。
昔はショートターンのことをウェーデルンと呼んでましたが、2000年以降のアルペンW杯でのカービングスキー板の使用率上昇で、
ウェーデルンが死語になり、小回りが一般的になった
という印象が個人的にはあります。
実際、全日本スキー連盟 (SAJ)でも「小回り」と表現してます。
では、この2つの違いはなんなのか?
大きな違いとしては
ウェーデルン時代のショートターン用スキー板の長さが190cm前半だったのに対し、今は165cm以下が主流。190cmの板でショートターンするにはテールをずらす必要があったが、カービングスキーは165cmで小回りが効くので、テールをズラさず車のような「小回りが効く滑り」になた
という経緯があります。
ですが、スキー検定ではスピードが増すカービングでの小回り暴走者がゲレンデで多発し、事故が増えたので、テールのズラしがあるウェーデルン時代の要素を今でも1級まで残してるわけです。(SAJ資格検定受検者のために2022年度のP71に記載があります)
パラレルターン中回りとは?
中回りとはターン弧が7mから9mほどの幅になります。大回りと小回りの中間となるので、この辺のさじ加減は各自にお任せします。
アルペンだとスラロームのアンダーゲートくらいの感覚でスキー技術選2024でも種目として登場してます。
パラレルターン大回りとは?
このことは過去記事にあるので詳しく知りたい人はこちらをご覧ください。
なお、スキー検定の場合1級からパラレルターン大回りが登場します。ベーシックパラレルターン大回りとは違うので、その辺は注意してください。(上記のリンク先の記事に情報を掲載してます。)
全日本スキー連盟(SAJ)のバッジテストが求めるパラレルターンとは?
上記まではあくまで「一般的な解釈」のお話でした。
ここからは全日本スキー連盟の定義するパラレルターンについて解説します。
SAJにはベーシックパラレルターンとパラレルターンがある
上記のイラストはSAJがスキー検定(バッジテスト)にて区別しているベーシックパラレルターン(旧名:基礎パラレルターン)とパラレルターンの定義です。
要はSAJの場合、
- ベーシックパラレルターン→一般的なパラレルターン(テールをズラす滑り方)
- パラレルターン→カービングターン
になるので、呼び方が変わると思って結構です。
実際に1級と2級を受験しに行ってるので、この辺の解釈は間違ってないですし、こちらでもP71に「横滑りが基礎」と書いてるので、この「横滑り要素」が入ってるものがベーシックパラレルターンとなります。
詳しい解説は下記の記事や動画にあるので参考にしてください。
なお、検定のターンの種類は記事前半でお伝えした小回り、中回り、大回り、不整地の4つがあります。
また、1級と2級では検定種目名が同じでも求められる技術レベルが異なるので、間違っても2級の滑りをそのまま1級の「ベーシックパラレルターン小回り」で披露しないようにしましょう。
詳しい違いは下記で解説してます。
1級より上のテクニカル、クラウンでもより高度なパラレルターン技術が求められます。
具体的には
C字のパラレルターンからS字のカービングターンが求められる。エッジングの時間はさらに短いし、ターン後半の抜け(加速)が要求される。
と言えばわかりやすいでしょうか。
実際に検定動画などがYouTubeにあるので、違いを探してみてください。不整地もより直線的でエッジングが短いスキーヤーの方が80点以上出てたりします。
スピードと正確性、構成、ターン弧が求められるのがプライズテストになります。
モーグルおけるパラレルターンの種類
昔のモーグルはターン50点、エア25点、スピード25点でしたが、この記事を書いてる現在では
- ターン:60点
- エア:20点
- スピード:20点
に変わっており、よりターン精度が見られる時代となりました。
かといって、上記のスキー検定とは違い、大きな違いとしては
モーグルはスピードが求められるので、より速いターン技術とラインが物凄くまっすぐに対し、基礎スキー検定や技術選はテールによるズラしを含む必要がある、ターン弧を描く必要があるのでスピードが基礎の方が劣る
という違いがあります。
スピードを見ると一目瞭然ですので、興味のある方は基礎とモーグルの違いをYouTubeなどで研究してみてください。
なお、アルペン同様、モーグルからも基礎に転向してきてる選手も実際に存在しており、コブの技術がアルペン出身者よりも抜きん出てるのが技術選なんかみてもよくわかり、点数も上のことがよくあります。
アルペンスキーのパラレルターンの種類
アルペンスキーは旗門と旗門を通過する競技なのでパラレルターンと言えばパラレルなのですが、基礎と競技の大きな違いの1つに
アルペン競技はフルカービングターンであり、ズラすのはタイムロスになるので基本タブー。一方、基礎はその逆でズラす必要がある。(技術選は別)検定ではこの辺の違いに戸惑う人が多い。
という特徴があります。
わかりやすくイラストで解説すると、基礎スキーは一般的に左側の滑りの「要素」を入れる必要があり、1級までは特にその傾向が強いです。
また、アルペンスキー競技は
- 回転(スラローム:SL):最もターン数が多く、旗門が細かくスピードが遅い
- 大回転(ジャイアントスラローム:GS):回転の次に旗門数が多い。基礎でいう大回りに近いロングターン
- スーパー大回転(スーパージャイアントスラローム:SG):格好競技の次に速いスピード系種目であり、大回転と滑降の間くらいのインターバル。ターンも超ロングターンといったところ。
- 滑降(ダウンヒル・DH):最もスピードが出る種目。直滑降に最も近く、ほぼクローチングを組む種目。アルペンスキーワールドカップ最高速は150キロ近くになることも。(W杯の歴代最高速度は2013年1月19日にスイス・ウェンゲン男子滑降で記録したヨハン・クラレイ(Johan CLAREY・フランス)の161.9キロとなってます)
の4つのターン種目が存在します。
それぞれ技術が違い、求められる体型も変わってきます。(技術系選手はダウンヒル選手よりも体重が軽かったり、筋繊維が細い体つきが印象的です。とはいってもダウンヒラーでもキルデのようなスラロームや大回転も上手い選手が一部存在します)
深雪(パウダースノー)やマウンテンスキーのパラレルターンとは?
シュテムターンという割と初心者が足を揃える時に使うスキー技術が存在しますが、氷の斜面を滑る山スキーとかではこのような
パラレルターンではない滑り方
が存在します。
むしろ、横滑りの技術の方が遥に使う機会が多いケースもあるでしょう。そうでないと滑落するかもしれないからです。
滑落したら死ぬ確率も高いので、そもそもパラレルターンで高速で滑ることはマウンテンスキーの世界ではほとんどないかと思います。
また、ニセコのような深雪(パウダースノー)を滑る際は、下記の動画で説明した3つの腰高ポジションよりもさらに4つ目の
お尻を少し下げた後継気味のポジションで、スキーのトップ(先端)を上げる意識で滑る。でないとスキーの先端が雪に刺さり、転倒の原因になる。
といったゲレンデでのスキー技術とは違うパラレルテクニックを使います。
この動画の話はあくまでもゲレンデ内での話を基本としてます。(もちろん雪質によっては非圧雪地帯でも使うことがあります)
山スキーは危険も伴うので、ゲレンデとは全く違う技術となってきますが、少なくとも山スキーをする人は基本、ゲレンデでの足を揃えて滑るパラレルターンができる人がほとんどなので、スキーが下手な人はいません。
むしろ、ゲレンデスキーよりも難しい場合があるので、上級者のみの世界と言えます。
パラレルターンの種類は様々
以上、パラレルターンの種類を解説してきましたが、今の時代は大きく分けて
- カービングターン:エッジを立てて、テールをずらさず、雪煙が舞いづらいスピードのある滑り方
- パラレルターン:板のテールをズラし、ブレーキ要素を強めた安全性の高いターン
に大きく分類されます。(上記の写真のような感じ)
この2種類ができれば、競技まで対応できるので興味のある方は挑戦してほしいなと思いますが、全部をマスターしようとすると練習期間は1年では済まないでしょう。
プロでも3年はかかるんじゃないかと思いますし、アルペンやモーグルもできるようになるにはもっとかかるかと思います。
日本では瀧澤宏臣さんというアルペン、モーグル、スキークロスの3つで日本代表を経験したオールラウンドなスキーヤーがいますが、おそらく世界的に見ても3つのナショナルスキーチームメンバーに選ばれた人はいないのではないかと思います。
アルペン経験者が多く出場するスキークロスでも全く違う技術が問われるので、ここでは紹介しきれなかったパラレルの技術があります。
あくまでもこのページは代表的なパラレルターンの種類について解説したので、興味のある方はもっと調べてみると面白いと思いますよ。
1950年、1970年、1990年後半でもターン技術が全く違いますから。