1級と2級基礎パラレルターン小回りはどう違うのか?を解説
今回のSAJバッジテスト合格法&アルペン競技や基礎スキーの上達方法まとめは同じ名前である1級と2級の基礎パラレルターン小回りの違いについて解説します。
SAJバッジテストの1級と2級に「基礎パラレルターン小回り」という検定種目があります。
同じ名前だけど、1級と2級何がどう違うの?
という疑問がある方もいるかと思うので、今回は深掘り解説します。(色々疑問点も出てるので複数回になるかもしれません)
ちなみに月刊スキーグラフィック 2024年1月号に1級と2級の合格・不合格者の滑りの違いが解説されているので、両方を見てもらえればと思います。
ジャッジする側の視点を知っておくことはすごく大事ですよ。
なお、1級と2級の合格のコツ、合格者・不合格者の違いなどは下記の動画でまとめてるので、気になる人はこちらもどうぞ。
スキーバッジテスト1級と2級「基礎パラレルターン小回り」の違い
ざっくり結論から言ってしまうとこんな感じです。
表面的に明らかに違うのは
という大きな違いこそあるのですが、おそらくスキーにそれほど熱心でない方からすれば
2級と同じ滑り方すればいいんだー
と勘違いされる方も多いんじゃないかと思います。
しかし、実際には
の違いがあります。
実際にこちらの本でも1級と2級のお手本の滑り(P88とP92)を比較してもパッと見は
1級の方は若干立ち上がっていない(連続写真の④)
というのがわかるかと思います。
他にどこがどう違うのかを今回は深掘り解説します。
違い1:2級は中斜面、1級は急斜面
全日本スキー連盟(SAJ)公式の発表では
SAJが定める緩斜面・中斜面・急斜面の定義
緩斜面:5°〜10°
緩・中斜面:10°〜15°
中斜面:15°〜20°
中急斜面:20°〜25°
急斜面:25°〜30°
だそうです。ちなみに動画は34度の急斜面です。
https://twitter.com/hide_skiarea/status/1678877417967058945
つまり、1級になると25度以上の急斜面ということになります。(実際の検定場所はスキー場によります。あくまでも目安です)
25度以上となると、まあまあ基礎パラレルターン小回りといえど、スピードが出てくれば重力の影響で斜面の下方向に落とされるということが出てくる角度でしょう。
1級までは「基礎」が付く種目があるので、テールのズラしを使ったスキーテクニックを使う必要があり、逆にフルカービングで小回りすると69点の不合格点をもらってる方もいますので、2級とは違い、1級では
一定のリズムでテールのズレを最小限にする技術
を使うことも重要です。
1級基礎パラレルターン小回りでフルカービングして69点不合格点になった実際の動画。
再生後31分33秒のところで解説されてます。「基礎」がつく種目はテールのズレを使う必要があります。
https://twitter.com/hide_skiarea/status/1746274647686173140
2級の基礎パラレルターンは中斜面ですから、ターン後半ラインが落とされるというリスクが最初から減らしてるので、2級では
こういった点を見て、1級挑戦に必要な技術を確認されるのが2級と思って間違いありません。
逆に1級だと
こういった違いが1級と2級の基礎パラレルターン小回りであるので、受験する方は注意が必要です。
違い2:ターン処理の違いがある
上記の「違い1」でも書いた通りですが、1級と2級の違いは
という細かい点も見られます。
当たり前の話ですが、スキーはスピードが出るほど難しくなり、オリンピックに出れる人は一握りなのと同じで、レベルが高くなるほど「スピードがある状態でも正確に動作できる能力がある」わけです。
1級より上のテクニカル・クラウンではスピード時での技術が中心になってくるので、1級ではその前段階、つまりテールのズラしを使った状態のスピードレベルで基本技術がきちんと使えるかを見られます。カービング技術は1級のパラレルターン大回り、テクニカル・クラウンでの話で初めて使います。
違い3:1級は上下の動きが激しいと69点のケースも
この事例は月刊スキーグラフィック 2024年1月号 のP91に実際に記載されており、記事の左上の69点のスキーヤーの連続写真で解説されているので気になる人は見てください。
なぜ上に力が抜けることが良くないのかが書いてます。
違い4:2級は板を横にしても外足荷重、1級はターンのキレも必要
2級は暴走すると減点になる傾向が高いので、板を横にしても一定のスピードとリズムで、かつ上記で説明した基本技術ができていれば大体65点以上はもらえます。
しかし、1級で求められるのは2級のようなゆったりしたスキー動作ではなく、1つ上のレベルの「素早いターン処理」です。
出ないと、急斜面はどんどんスピードが上がって暴走になり、「制御不能のスキーヤー」と検定員に判断されるので、落下スピードが上がる急斜面はより早い動きが要求されるわけです。
そして、2級とは違い、ターン後半のキレ(抜けとか加速)、推進力があるかどうかも見られるので、
というアルペンスキーのスラロームのような動きが求められるわけです。
意識の部分と無意識の部分の両方を正確に操作できる技術が上級者には必要
アルペンスキー競技の場合、旗門と旗門があるわけですが、この指定された旗門の間で全部ターンを素早く処理しないといけません。
ゲレンデスキーヤーの場合、自分の好きなタイミングでどうしても練習してしまうので、アルペンスキー経験者に比べターン処理が遅くなる傾向が高いです。
基礎スキーの最高峰である全日本スキー技術選手権大会のほとんどがアルペンスキー競技経験者で構成される理由はこういった背景もあります。
タイムが速くなるということは、1つ1つのターンも全部速いというわけです。
つまり、処理能力が高いスキーヤーということになります。
脳と神経回路のトレーニングなどもアルペンスキー経験者や上級者は夏場にやってるので、もし急斜面の処理能力がなく、後手後手でターンして69点以下の人は下記の動画が参考になるかもしれません。
ちなみに余談になりますが、人間は運動する時、脳から指令が出て反応するまでは0.5秒かかります。
スキーやスポーツは目に見える部分は「意識できる世界」で治しやすいですが、目に見えない部分(手や足、頭など)の動きは「無意識の世界」は思うように動いてくれません。
この「無意識の部分」をどう脳で正確に動かせるかがスポーツをする上では非常に重要であり、音楽やスポーツなど貴族が行ってきた分野は特にこの分野の成長発達を促す教育を行ってきてます。
なので、こういった能力を鍛えてこない人は
「脳が指令して体が動くまで0、5秒かかる」
ので、後手後手でターンするスキーヤーは
ということを繰り返すと脳にデータベース、つまり経験値によって体を考える前に行動させることができるので、より素早い動きが可能となります。
よくスキー上達をする上で
「滑走日数が大事」
と言われる最大の理由はここにあります。
一方、夏場は雪上練習ができないので、ボールを使ったり反応系の練習など脳の神経回路や体が様々な動きを瞬時に動かすため、スキー選手たちは数多くのスポーツを基礎体力トレーニング以外にやります。
1級以上は特に夏場のトレーニングが重要になってくるので、よりレベルの高いスキーヤーになりたいのであれば基礎体力を鍛えること以外に様々なスポーツをしておくことを強くお勧めします。
いろんな動きを正確にできることがスキーでは重要なので、腕立て1回にしても、スクワット1回にしても正確に行うよう普段から「正確に体を動かすトレーニング」を意識してするようにしましょう。