フルカービングターンとカービングターンの違い


今回はフルカービングターンとカービングターンの違いについて解説します。
簡単に言ってしまうと、
- カービングターン:主に基礎スキーで使うカービング。アルペンでは急激に横に振ったポールセットなどで使う以外は、アルペンではあまり使わないのが理想。
- フルカービングターン:スキー板を横に向けないで、バンクの中でずっとターンしていくイメージ
です。

バンクの中を滑っていくイメージに関しては下記の動画内で説明してます。
カービングターンとフルカービングターンの違い
今回は「カービングターン」と「フルカービングターン」の違いについて整理しておきたいと思います。
なぜこのテーマを取り上げるかというと、ここには1級とプライズテストの滑り方の違い、そして基礎スキーと競技スキーの滑り方の違いが、はっきりと表れているからです。
アルペンスキー競技では、なるべく雪煙を上げず、板を横にせず、しっかり板をたわませてフルカービングで滑り抜けていく――これが基本的な考え方になります。
一方、検定の場で「ベーシックパラレルターン(かつての基礎パラレルターン)」と呼ばれるのは、少し横ずれを使いながら一定のリズムで滑り降りてくる滑り方です。
この二つは、似ているようで狙いがまったく違います。
検定で起きた「カービングしすぎ」の評価
具体的な例があります。フルカービング寄りの滑りで1級に対して69点という評価を実際に受けています。
検定員のコメントを聞くと
- カービング要素が強すぎて回転動作が安定していない
- 回転弧がバラバラになっている
という趣旨の評価でした。
つまり、一定のリズムで滑り降りてくることが求められる場面では、
「一般レベルのスキーヤーの場合、少し横ずれを使ってリズムを整えるベーシックパラレルターンのほうが確実だ」
ということです。検定員のクリニック動画や基礎スキーの合格・不合格の違いを見ていても、横ずれをきちんと使って一定のリズムで降りてくる滑りが、バッジテスト1級までに求められる技術だと感じます。
フルカービングはエッジングの時間が極端に短くなる滑り方で、2本のラインが描き出されるように滑っていく――横ずれを使わないのがアルペンスキーの世界です。テクニカルやクラウンになるとどこまでフルカービングを使うのか、私自身は受検していないので断言はできませんが、少なくともバッジテストの段階とは前提が違います。
違いその1:センターポジションの位置
ここからは、具体的にどこが違うのかを見ていきます。今回は4つのポイントを挙げますが、まず一つ目はセンターポジションの位置です。
映像で見るとポジショニングはほぼ同じに見えます。ただ、板をたわませて2本の線を描こうとすると雪煙が上がらないため、横ずれを使わず、滑らせるように滑ることになります。
感覚的な話をすると、横ずらしの滑りではブーツの真上に腰がくるイメージです。これに対してフルカービングは、ほんの気持ち、1センチほど後ろ気味にして板をたわませます。このわずかな違いで、雪煙の立たないショートターンができあがります。
違いその2:ターン後半の処理
トップ選手の切り替えを見ると、この違いがよく分かります。
スキーグラフィック2026年6月号の8ページに掲載されている穴田玖舟選手の連続写真では、ターンの切り替えがフォールラインを向いたまま行われています。5番から6番のカットでは、いったん間を「待っている」ような印象があり、6番で一気に板をたわませていく。トップ選手の切り替えはこういう形です。
私自身の感覚でこの二つの滑りを比べると、横ずらしのほうは、ターンとターンの間に板をフラットにする時間を作っています。
実はこれは、1級の事前講習で
「ターンとターンの間にフラットになる時間を作ってください」
と言われたことに由来していて、一瞬その時間を作っているのです。
その結果、ターン弧は大きくなります。
一方のフルカービングは、連続写真を見てもフォールラインを向いたまま――向けっぱなしと言ってもいいくらいで、ここがはっきり出ています。技術選では、こうした切り替えが高い評価につながりやすい部分です(アルペンについては競技の性質が違うので一概には言えません)。
なぜ基礎スキーは横ずれなのか
では、なぜ「板をずらす」のが基礎スキーなのか。これは資格検定受験者のために2022のP71に「昔は横滑りがあった」という記述があります。
背景には安全の問題があったと考えています。
カービングターンによる暴走が増え、事故も増えたため、なんとかしなければならなかった。スピードコントロールの手段として横ずれを位置づけ、評価の軸に据えた、ということだと思います。
例えるなら、アルペンレースはサーキット、基礎スキーは一般道です。
走り方が違うのは当然で、使うマシンも違う。F1とその辺を走る乗用車がまったく別物であるのと同じです。特にバッジテストまでは教習所のような段階なので、横ずれでスピードをコントロールする滑りに優先的に点数がつく仕組みになっています。
検定員のクリニック動画でも、この違いははっきり説明されています。
「カービングターンは使っていい」の意味

事前講習でもう一つ印象的だったのが、2級の講習で「カービングターンは使っていい」と言われたことです。
このとき「フルカービングターン」という言葉は使われませんでした。
なので、

おそらく横ずれを併用したカービングターンのことだろう
と私は解釈しています。
これに対してフルカービングターンは、完全にアルペン競技の、1本のラインを作っていく滑りです。
連続写真で見る違い

連続写真でも確認できます。
ベーシックパラレル(1級の練習)の動画では、左から3番目あたりで横ずれが入りますが、その手前、左から2番目のテール部分を見るとラインができています。つまりここまではカービングできているわけです。(上記の写真参照)
なぜカービングできるかというと、センターポジションに乗れていると板の先端が使えるからです(このあたりは以前のカービングターンの動画でも説明しています)。先端に圧がかかり、重さが乗ってくるので、きれいなラインが描ける。そこから横(谷側)に振るとずれを使えるので、これでスピードをコントロールします。
一方のフルカービングは、谷側にずらさず、そのまま板をたわませていきます。重さが乗るので後半にギュンと走っていく。これがアルペンスキーの滑り方で、ある意味で昔の滑りに近いものです。

フルカービングは新しい技術ではない

フルカービングというと、2000年前後にカービングターンが広まったときの新技術のように思われがちですが、実はずっと前から存在します。
カービングスキーが登場したのは、私の記憶では1991年のクナイスル「エルゴ」あたり(エランだったかもしれず、ここは定かではありません)。世界初のカービングスキーと言われる板です。当時から「ずらさずに滑る」練習はしてきたわけで、技術としては30年ほど前から、下手をすると80年代からあったものです。
アルペンであれば、ずらせば減速になるので、たわませて滑るのは昔からの定石です。ただ、それをより滑りやすく、ターンしやすくしたのがカービングスキーという道具でした。
象徴的なのが2000年前後のワールドカップです。オーストリアのトーマス・スタンガッシンガー選手は、長いクラシックの板(190cm台のサロモンだったと記憶しています)を履き続けていました。周りはみな160cm台のショートカービングへ移行していて、何度やってもカービング勢が勝ってしまい、スタンガッシンガー選手はそのまま引退しました。
うまく適応していったのが、オーモットや、亡くなってしまいましたがフィン・クリスチャン・ヤッゲといった選手たちです。こうしてまずレースの世界から一気に普及し、それから20年あまり――今では横に振り幅のあるターンが主流になっています。これが時代の流れです。
今回は、フルカービングターンとカービングターンの違いを整理しました。検定の言葉でいえば、ベーシックパラレルターンとパラレルターンの違い、と言えるかもしれません。
競技でもフルカービング寄りのターンで滑ってくる選手はいるので、どちらが有利とは一概に言えません。ただ、以前の動画で触れたように、トップ選手の一部はあえて横ずれを使っています。技術選は「技術を選ぶ大会」なので、横ずれを使いながらも使っているように見せない――どう見せるかが基礎の見せどころで、ここがアルペンとは違うところです。
もちろん、エッジングが短いほうが評価は高い。これはアルペンも同じです。
正確な定義というよりは、私がこれまでこういう考え方でやってきた、という共有です。こうした違いがあることを、まず頭に入れておいてもらえればと思います。
追伸:もし検定員や指導員などの資格を持ってる方で間違いがあれば訂正動画と記事を作成するので、下記のコメント欄から情報提供いただけると幸いです。
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