今と昔のアルペンカービングターンテクニックどう違う?W杯出場の小山敬之選手に勝った佐々木明選手、全日本スキー選手権SL2025は途中棄権

今と昔のアルペンカービングターンテクニックどう違う?W杯出場の小山敬之選手に勝った佐々木明選手、全日本スキー選手権SL2025は途中棄権

Photo:Akira Sasaki/shutterstock.com

カービングスキー板がW杯で本格化して25年。カービング黎明期の佐々木明選手と今のカービング世代の滑り方の違いを書きます。

今回はXのこの投稿を深掘りします。

佐々木明選手途中棄権。あそこはインスペクションで見抜いておかないといけない箇所だったかと。ターン後半に乗りすぎた感じ。FEC白馬ではW杯に出た小山敬之選手より速いタイム出しただけにもったいなかったです。次。

大会映像とリザルトはこちら
アルペンの基礎技術解説
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カービングターンは今と昔でどう変わってるか?

滑りの違いは上記の動画の再生後4分からの比較映像で説明してますが、アルペンスキーの場合

  • 佐々木明選手が第一シードにいた頃はポールがもっとまっすぐ。その後2014年ソチ五輪男子回転2本目から徐々に振り幅が広くなっていく。
  • 2022年以降、アルペンW杯はさらに深回りになった(その象徴が2023年アルペンスキー世界選手権男子回転のポールセット)

という違いがあります。

これは私が上記の動画の基礎スキーの中で解説した時期と一致しており、

基礎スキー業界(特に技術選)はアルペンのポールセット傾向に影響して滑りも変化していく(上下動問題はあるけど)

という海外と同じ流れになってます。(海外のスキースクールはアルペンベースで教えてるので上下動がもっとハッキリしてます)

ちなみに2025スキー技術選柏木義之さんと安食真治さんとの対談を見てもわかるとおり、

「スラロームのインターバル9m」

がおそらくジャッジにかなり意識されたのではないかと思われます。

それだけ今のアルペンスキー競技、特にスラロームは旗門と旗門インターバルが狭く、横移動する流れになっており、これに佐々木明選手がどう最適化していくのかが個人的に非常に楽しみで見ています。

ターン後半型の佐々木明選手、ターン前半型の今風のカービング世代どちらが速いのか?

2014年頃から上下動の問題がレーシングと基礎の世界で問題となってますが、基礎も競技も基本はこの上下の動きです。(上に力を抜かないことが条件)

ただ、今のアルペンスキーのカービングターンの特徴は

  1. ターン前半の捉えを速くするのに両膝が平行
  2. 両膝平行になると板のトップが雪面を捉えてくれるので、横にキレるように曲がって板がしなり
  3. ポールを過ぎた頃にはターンが終わる
  4. 太ももの靭帯にすごく負担がかかる滑り方(これが今問題になってるがFISは止めない・・・)

という特徴があります。

実際に全日本スキー連盟の日本スキー教程ではベーシックパラレルターンという名称でアルペンのような滑りをベースに初心者から上級者までシンプルに上達するノウハウを解説してます。

確かにこの方が今のポールセットではタイムは出るでしょうが、佐々木明選手は従来通りターン後半に圧を集中させる滑り方でW杯組に勝つことを証明したので、今後FISやSAJでも議論すべき課題ではないかと思ってます。

ただ、国際スキー・スノーボード連盟(FIS)はこのポールセットの傾向をやめないので、こういった横幅のある深回りでタイムを出したいスキーヤーにとっては今の若手の滑り方の方がタイムは出るでしょう。

ただし、靭帯断裂の怪我のリスクはかなり高い滑り方と言えるので、個人的にはそこまで膝に負担がかかる滑り方は動画内でしないようにしてます。(安全に楽しく滑る一般スキーヤー向けの内容なので)

理想はシフリンの滑り方が1番怪我をしにくく速い

靭帯の怪我が多い近年のアルペンスキー競技ですが、ただ1人大きな怪我をせず勝ち続けるスキー選手がいます。

それがアルペンW杯通算100勝を達成したミカエラ・シフリン(USA)です。

彼女の滑り方は

  1. 腰高で
  2. 上下動をきちんと使い
  3. 身体の負担が少なく、かつ失敗の少ない滑り方で上位に居続ける

という戦略です。

もちろん、パワーを求めて小山陽平選手や引退したマリオ・マット(オーストリア・2014年ソチ五輪男子SL金メダリスト)のような

  1. 姿勢低めで
  2. 上に圧を抜かず
  3. とにかくできるだけまっすぐにして滑り、板に圧をかけ続ける

といったスタイルも1つの方法ではありますが、かなり足腰に負担がくる滑り方ではないかと個人的に思ったりもします。

ただ、姿勢が低いと待つポールを時間が少ないので「ハマれば速い」というメリットがあるのですが、タイミングがズレると板がすぐにずれて減速するというデメリットもあるので、私は昔から腰高の滑り方にしてます。

1級合格時は練習不足でターン後半の加速が少ないと判断し、体重73キロから77キロ、体脂肪ももれなくついて14%から17%まで1ヶ月で増やしましたが、コブで膝痛めそうだったのでその後半年で体重65キロ、体脂肪9%まで減らしました。65キロだとさすがに上下動ないと70キロ以上の選手とは戦えないです。ちなみにアルペン全盛期は体重64キロで入賞してました。アラフィフになって高校時代の体型に戻してます。

今のアルペンW杯、特に男子スラロームは完全に欧米人有利なパワー型であり、下半身の筋力と瞬発力が求められます。

アルペンスキーには2つの滑り方がある

アルペンの滑り方

  1. 姿勢低め型:途中失敗してもいいから、1番スピードが出る加圧型だがミスも増える(一発屋型に多い。ターンもまっすぐ目に入る人が多く、中緩斜面に強い。)
  2. 姿勢高め:腰高で失敗が最も少ない、急斜面の振り幅のあるセットにも強い上下動重視だが、安定感はあるが爆発力がない。(ターンは丸い弧が多い。急斜面に強い傾向あり。)

もちろん、人それぞれ細かく違いがあり、ボディ・ミラーのようにまっすぐなラインだけど、スラロームは腰高という選手もいますが、ざっくり分けるとこの2種類にみなさん大体当てはまるはずです。

どちらもメリット・デメリットがありますが、1番のタイプは勝利型、2番はポイントコツコツ減らす型という特徴もあります。

シフリンはミスを減らすことで、上位をキープするタイプです。女子に関してはこれで今のところこの方が上手くいくのかもしれません。

しかし、男子はそうでもなく黄色人種の選手にはますますきつい状況になってます。

本来なら全日本選手権2025を制したオーソドックスな相原史朗選手のような滑り方がW杯では向いてると個人的には思うのですが、パワーがないと今のW杯は戦えないのかな?と感じてます。

切久保仁朗選手は昨年に比べ、ポジションの前後さが減っておりセンターに乗り続ける滑りに変化してるので、この2人の滑り方はさらに磨けばW杯でも通用すると思ってます。

そして、佐々木明選手の活躍にも期待したいですね。

なお、2026冬季オリンピックアルペンスキー日本代表選考基準は全日本選手権の結果ではなく、W杯、世界選手権、ヨーロッパカップ、FISポイントで決まるので、おそらくW杯の下部レースで熾烈な代表選考が今後展開されると思われます。

*2026イタリアミラノコルティナ冬季オリンピックアルペンスキー日本代表選考基準

続き:今までアジアの冬季五輪が連続で行われたので、まあー仕方ないかなと。スキーの斜面が別物で、違うスポーツというくらいレベルが違います。 イタリアが舞台なので海外成績重視にJOCとSAJが考えたのでしょう。

https://x.com/hide_skiarea/status/1898455392491098407

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基礎・競技に関係なく使えるスキー上達法についてYouTubeとブログで解説しています。用具に関する話題なども豊富にブログで書いてます。

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